HPVワクチンって何歳まで?

今更なのですが、HPVワクチンって、推奨年齢以上でも打てるようで、45歳までは効果あるらしいってどっかで見たけど…そうなの?その話どこからきてるの?ちゃんと調べてみようということで、今回はこの話。

中年でも皆でワクチン打とう!とかいう話ではないので、そこのところよろしくお願いします。正しい知識で判断したいねって話です。

これは素人の備忘録用まとめなので、正しい情報を知りたい方は専門サイト等をご確認くださいね。

 

 

「HPVウイルス」と「がん」

HPVとは、ヒトパピローマウイルスのこと。200種類以上あると言われていて、大別すると、皮膚型と粘膜性器型の2種類に分けられるそうです。

がんと関連があると言われているハイリスクタイプは13種類で、中でも発がんと強く関係するのが16型、18型になります。

HPVが関係する疾患は、「子宮頸がん」「肛門がん」「咽頭がん」「外陰がん」「陰茎がん」「尖圭コンジローマ」など。

 

HPVに関しては、日本でも2010年からワクチン接種が可能になりました。2010年に公費助成、2013年4月に国の定期接種が始まり、その高い予防効果から若い女性に接種が推奨されていたものの、いろいろとあって日本での接種率はかなり低い状況。

 


数年前から接種が可能になった9価ワクチンの「シルガード9」は、子宮頸がんの原因の90%近くを予防することができます。これはすごいことだと思います。

私が若かったら迷わず打ってる…。しかし若くないナウ。

 

なお、子宮頸がんの原因の95%以上はHPVによるものですが、HPV感染と関係のない原因によるものもあります。

 

人がかかる多くのがんは、遺伝性腫瘍などごく一部を除き、そのほとんどは未だ原因が確定していません。これに対して、子宮頸がんは、そのほとんどがHPVというウイルスの感染が原因であることが科学的に証明されているがんであるという点が極めて特徴的です。そのため医学的に、より確実な予防法が世界で普及すれば、将来子宮頸がんは劇的に減少し、根絶に近づく可能性があるともいえるでしょう。

子宮頸がんは扁平上皮がんと腺がんという大きく2つの組織のタイプに分類されますが、HPV は扁平上皮がんのほぼ 100%、ごく一部の特殊なタイプ(胃型腺がんなど)を除く腺癌の90%以上から検出され、全体として、子宮頸がんのほとんどはHPV感染が原因であるといえます。

https://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Q%26A.pdf

 

ということで、他の原因もあるとはいえ、それは稀なので、HPV感染を抑えることができれば、ほとんどの方において、子宮頸がんの予防につながるといえるのですね。

 

 

45歳までは効果があるの?

で、ここからが今回の本題。

ここ数年耳にする「キャッチアップ接種」。27歳までの女性が対象となっていますが…どこぞで聞いた45歳まで効果あると言うのはどこからきているのでしょう?何かの研究の結果からなんだろうけど…。

こんな時は専門サイトを確認するのがいいかもしれない。日本産婦人科学会のサイトを拝見してみました。

 

www.jsog.or.jp

 

その中にこんな記載がありました。

多数の国からの参加で行われた2価HPVワクチンの臨床試験(PATRICIA trial)の報告によると、25歳以下のHPV未感染者においては年齢にかかわらず、CIN3以上の組織診異常に対する高い有効性が認められました(100% 95%CI;85.5%-100%)。

4価HPVワクチンの臨床試験(FUTUREⅡ study)では、HPV16/18型の未感染者においては、CIN2以上の組織診以上を27%(95% CI;4%-44%)減少させました。どちらの臨床試験でも、重篤な有害事象の発生頻度は接種群と対象群で差はなかったと報告されています。

45 歳までの2価・4価HPVワクチンの有効性と安全性は、その他の臨床試験でも同様に証明されています24,25


キャッチアップ接種は、接種する時点で感染していないHPV型の感染予防とそれに伴う子宮頸部病変のリスクを減らすことはできますが、既に感染しているHPV型は予防できないことから、キャッチアップ接種の対象者には接種時に検診の重要性を十分に説明することが必要です。感染していない HPV 型は予防できることから、細胞診異常者やHPV 既感染者を接種から除外する必要はないと、海外や本邦のガイドラインに示されています。

https://www.jsog.or.jp/wp-content/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Part3.pdf

24. Lancet. 2009;373(9679):1949-1957.

25. Lancet Infect Dis. 2016;16(10):1154-1168.

 

おお!これが根拠の一つ(二つ)なのか!

 

日本婦人科腫瘍学会のサイトにもこんな記述がありました。

Q7. 定期接種以外の年齢でワクチン接種を受けることはできますか?
   その効果はどうですか? また、何歳まで接種を受けることができますか?

できます。HPVワクチン接種を定期接種の対象年齢(12~16歳)で受けることができなかった人でも、その後にワクチンを接種することによって一定の効果が得られると報告されています。Q3にあるスウェーデンからの報告では、17歳以前に接種を受けた女性では88%の子宮頸がんの減少、17~30 歳で接種を受けた女性でも53%の減少を認めていました。17~30 歳では17歳以前に比べれば効果は低いものの、有効であると認められます。ワクチンの使用についての添付文書では、接種年齢の上限は書かれていませんが、海外の報告では、45歳までの接種はHPVワクチンの効果が認められており14)アメリカでは女性に対して26歳までの接種を推奨しています15)

なお、ワクチンの効果というのは、ワクチン接種を受けなかった女性と比べて、接種を受けた女性では前がん病変である中等度異形成(CIN2)以上の発生が減少したという意味です。ワクチン接種はHPV感染の治療にはなりません。ワクチン接種以前にHPVに感染してしまっている場合(性交渉をしている場合)は、異形成などが発生する可能性があります。

HPVワクチンQ&A(12/24改訂) | 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会

文献14は上記の25の参考文献と同じ。

 

45歳までは効果が認められているって書いてある。

感染していないHPV型の予防はできる、ということが大きそうです。

 

論文の中身を見てみる1

Google翻訳の力をかりて、ちょっとのぞいてみることにしました。

 

Lancet. 2009;373(9679):1949-1957. 

ClinicalKey

これは24歳から45歳の女性を対象とした、4価 (6型、11型、16型、18型) のHPVワクチンの有効性や安全性をみた研究の第III相試験 (かなり多くの人を対象に、効果や安全性を調べる試験) のようです。

この研究の結果、24〜45歳の女性においては、4価のHPV型 (6,11,16,18) に感染していない場合、有効であるという結論でした。

 

『第III相試験』(検証的試験)
最後に、多数の患者さんについて、第Ⅱ相試験の結果から得られた「くすりの候補」の有効性、安全性、使い方を最終的に確認します。確認の方法は、現在使われている標準的なくすりがある場合にはそれとの比較、標準的なくすりがないときにはプラセボとの比較が中心になります。
これとは別に、長期間使用したときの安全性や安全性がどうかを調べることもあります。

2.治験の3つのステップ | 治験とは | 日本製薬工業協会

 

論文の中身を見てみる2

もう一個の論文はこちら。

Lancet Infect Dis. 2016;16(10):1154-1168. 

ClinicalKey

これも海外で行われた第III相試験。HPV 16型/18型 のワクチンによる検討。

この試験では、26-35歳、36-45歳、45歳以上の3つのグループに分けて検証したようです。約15%の方が、HPVウイルスの感染や、疾患の既往があったとのこと。

結論としては、年齢に関係なく、ワクチンの有効性が確認されました。

ただ、加齢とともに前癌病変になることが減少するから、ある程度の年齢になるとワクチンを打つ意味とは…ということになると解釈しました(この研究では、46歳までのグループの方が有効性が明らかな項目が多かった)。あってる?

 

 

接種推奨年齢ではない場合に接種したいとき

以上から、45歳までなら、有効性があること確認したから、打ちたい人はどうぞ、ということなんだなと理解しましたが、推奨年齢以上の場合は予防接種法の対象ではないんですよね。だから費用は自己負担 です。

 

対象者に該当しない方でも、任意接種としてHPVワクチンを接種することは可能です。お近くの医療機関などにご相談ください。ただし、この場合、予防接種法に基づく定期接種(公費での接種)の対象ではないため、接種費用は全額自己負担となります。

HPVワクチンに関するQ&A|厚生労働省

 

ちなみに、自由診療になるので、医院によって若干費用が異なります。ざっとみたところ、1回2万円台~3万円前半くらいが相場のようでした。(1回1万円台で接種が可能な医院もあるようです。)

 

接種できる場所ですが、産婦人科のほか、小児科内科などで接種できるようです。取り扱いのない医院もあるので、聞いてみるのがよいかと思います。内科なら男性でも受けやすいだろうなと思いました。

 

予防接種法の対象の場合は、健康被害救済制度の対象になりますが、任意接種の場合は対象になりません。

任意予防接種によって健康被害が起こったときは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による救済制度があります。

医薬品副作用被害救済制度 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

まあ…審査厳しそうですけど…。

 

 

最後に

今回は、HPVワクチンって何歳くらいまで有効なのか、という疑問から調べてみたお話でした。推奨年齢で打つのが理想ですが、そもそも昔はなかったですからね…。

リスクとベネフィットを天秤にかけて、個々で検討するしかないので、難しいところですね。

それでは今回はこのへんで。(*'▽')/

 

個人的には、もう少し対象年齢上げてあげたらいいのにと思うのと、あと男性…せめて若い男性は費用負担の対象にしてあげたらいいのにと思ってる…。
ちなみに、男子のHPVワクチン予防接種の費用を助成してくれる自治体もあるようです。

 

 

悩んでいる方向けの分かりやすい記事がありました。(*'▽')

medicalnote.jp